正しい男の選び方

浩平が軽く苦笑いをして、カナの頭をぽんぽんと叩いた。

「君の予想どおりだよ。オレが長澤さんを口説こうとして、振られたんだよ」

浩平はあっさりと言う。

「だろ?」

ちらりと葉子を見た。

「あ……うん、そう、かな」

葉子の返事はぎこちない。そもそも口説くとか振ったとか振られたとかそんな大層なことにはなってないんだけど。
反論は心の中でしかできなかった。

「肉ばかり食べて無駄遣いばかりする男は願い下げってね」

浩平が続ける。

「……何、それ」

カナが目を輝かせて突っ込んでくる。

「彼女、アマゾンの森林を守るためにベジタリアンになったんだよ」

葉子は、浩平の言い方にかすかな嘲笑を嗅ぎとった。
怒っちゃいけない、怒っちゃいけない……すうっと息を吸って、葉子はおもむろに話し出した。

「アマゾンの森林が伐採されるのには、もちろん色々理由があるんですけど、その一つに畑を作る、というのがあるんです。
 そこで植える大豆が牛の飼料になってるんです。ですから、牛が飼育されなければ、伐採される必要もなくなるんです」

なるべく冷静に、簡潔に、怒りを出さないように説明したつもりだった。



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