正しい男の選び方

「とにかく、昨日は来てくれてありがとう。それに、そのTシャツもあんなにたくさん、寄付も、助かりました」

「いえいえ、あんなのお安いご用ですよ」

浩平はさらっと言った。

「お安いご用」なんだ……

「まあ、カネを出すだけなら誰でもできますけどね」

政好がずいぶんと皮肉っぽい言い方をした。

「でも大事でしょ。カネがなきゃ何もできないんだから」

浩平の答え方もずいぶん挑発的だ。

「じゃ、カネさえ出してればいい、と思ってるってわけですか」

「そんなことは言ってないだろ。カネがあって初めて行動を起こせるのは事実だろ。
 現に、おまえらもそれがわかってるから寄付を募ってるんじゃないの?」

「カネ、カネ、カネって……アンタたちは、カネで全てがコントロールできると思ってるんだよな」

「はっきり言えば、全てとはいわなけど、ほとんどはそうだな。
 世の中を変えたいなら、マイ水筒を持ち歩くよりも、金持ちになった方が早い」

「……これだから、金持ちは」

政好は吐き捨てるように言った。
場の空気が一気に険悪になった。カナが明るく言う。

「さ、乾杯もすんだし、行きましょう」

「だな。じゃ、なんか邪魔して悪かったなー。あとはごゆっくり」

浩平はウソみたいに爽やかで邪気のない笑顔をみせた。

「……やっぱりアイツ嫌い」

浩平たちが立ち去った後、政好がぼそりと呟いた。


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