正しい男の選び方
その日、葉子は試食会の帰りだった。
新製品のラザーニアの冷凍食品の試食会だ。来月発売されるその製品の味を確かめて来い、と言われて、メーカーの試食会に参加することになったのである。
味、値段はもちろんのこと、調理の手軽さ、手堅さ(誰でも同じようにできるか)、パッケージのデザインなどを目で見て、チェックする。
葉子は、期待以上のラザーニアを試食して、満足げにそのビルを後にして、会社に戻ろう、というところで、バッタリと浩平に会った。
不意打ちだった。逃げる事もできずに思わず固まる。
「よう」
浩平は磊落に挨拶をしてくる。
「……」
「スーパーに戻るとこ?」
「……」
「少しは返事したら? オレのことずっと無視してるだろ」
「……スーパーに戻るとこ」
「じゃ、そこまで一緒に行く?」
タクシーを捕まえようとすると葉子はそっけなく言った。
「あ、私は歩くから」
「マジで!?」
「だってすぐ近くじゃない。10分もかかんないわよ。そうやって車ばっかり使うから空気が悪くなるのよ」
「少しは環境のことを考えたら」
「少しは環境のことを考えたら」
浩平と葉子の声がハモった。浩平はくっと笑って嬉しそうだった。