正しい男の選び方
「オレも、だいぶ、君のことがわかってきてるだろ?」
浩平が葉子の顔を覗き込む。いたずらっ子のように目をきらきらさせている。
相変わらず小憎らしい。葉子はぷいとそっぽをむいた。
浩平がほっぺたを指先でツンツンとつつく。思わぬ反撃に葉子はぷっと吹き出してしまった。
「ほら。笑った方が可愛いし」
「……」
「笑ったら負けとか思ってる?」
「別に」
「じゃ、笑いなよ。可愛いんだから」
「……」
「ホレホレ」
浩平は葉子の目の前でヘン顔をしてみせた。
葉子は我慢の限界だ。ぷっと息を洩らすと、けらけらと声を立てて笑った。
「強情なんだか素直なんだか……。意地っ張りなのは確かだね」
「アンタの意地の悪さほどじゃないけどね」
葉子は、イーという顔をしてみせた。浩平はその顔をみて優しく微笑む。
葉子は急に気恥ずかしくなった。
二人は並んで歩き出す。
「お、あの車テスラだ」
浩平が車を指差した。
「テスラ?」
葉子が首を傾げる。
「知ってるだろ。結構高い電気自動車。エコーなヤツらが買いそうな」
浩平は鼻で笑った。