正しい男の選び方
「欲しいの?」
「まさか。確か1000万ぐらいするはずだぜ。だったら、せめてポルシェでも買った方がいいよなー」
「あれ、あなた乗ってるじゃない?」
「あー、……多分フェラーリのこと言ってる?」
「……えと、スポーツカー?」
「あー、うん、じゃ、フェラーリのことだ」
浩平はおかしそうにくすくす笑う。
「車には全然興味ないんだ。ポルシェとフェラーリって全然違うよ」
「だって、どれも排気ガスをまき散らしてうるさいだけじゃない。特にスポーツカーなんて」
「……そう来たか。……じゃあ、今度ドライブに行こう」
「え?」
「うん、フェラーリで海まで飛ばそう。で、何か美味いもの食べない?」
「ぜんっぜん楽しくなさそう」
「じゃ、何なら楽しいのさ」
「あー、うん、……ハイキングとか?」
「ぜんっぜん楽しくなさそう。お、あれ、何、あの店?」
浩平が急に路地の隅のほうに目立たなく立っている店を指差した。
浩平は気が多いタイプなのか、気が散るタイプなのか、街を歩いている時ですら、興味の対象が次々と移っていくようだった。