正しい男の選び方
あさってになって朝きっかり8時。
エンジンの爆音が聞こえてくる。葉子はふうとため息をついた。
やっぱり来た。
葉子はドアの前に立って浩平を待ち構えていた。
「行かないっていったじゃない」
「行くさ」
「だって、今日は政好とハイキングに行く事になってる、って言ったでしょう」
「だから、その前に君をさらいに来たんだろ。さ、乗って」
浩平は葉子の手をとって歩き出した。
「ねえ、女だったら誰でも自分についてくると思ってる?」
「うーん、そうだなあ。思ってないけど、結果的にそうなってる」
「何、それ。あームカつく。私は絶対行かないから!」
「わかったから、早く車に乗って」
「全然わかってないじゃん。言っておきますけどね、私、政好と付き合ってるのよ?」
「わかってるって。だから今日はドライブして、飯、食うだけ」
この間、浩平はずるずる引っ張りながら、葉子を車のところまで連れて来た。
助手席側のドアを開ける。今日はこの前とは違う大きなSUVだった。
「どうぞ。乗って」
「……私、ケータイと鍵しか持ってないんだけど。部屋に戻ってバッグとって来ていい?」
「ダメ。ケータイと鍵があれば何とかなるだろ」
「これじゃ、まるで拉致じゃない」