正しい男の選び方
葉子の文句をよそに、浩平はドアをばたんと閉め、エンジンをかけた。
車はなめらかに滑り出す。
すぐに……羽田に乗りつけた。
何だろう、と思っている間に車から降ろされ、浩平について行くと専用搭乗口にワゴン車が待機してある。
そのまま乗るように促され、降りたら目の前には小型ジェットのタラップがあった……。
「乗って」
浩平が促す。機内に入ってからようやく葉子が口を開いた。
「……ドライブじゃなかったの?」
「そうだよ」
「飛行機に乗ってるけど?」
「せっかくだから飛ばせる道を走ろうと思って」
「…………」
開いた口が塞がらなかった。
「いつもこんなことしてるの?」
「時々ね」
「すごいムダ」
「すごいムダ」
葉子と浩平はハモった。浩平は葉子を見てウィンクをする。
(くやしい……!)
葉子は唇をかんだ。
機内から窓の外を見ると眼下に雲が広がっている。その上にある青空は果てしないように思える。
こんなところを飛んでいる飛行機の中に、浩平と二人でいることが何だか不思議だった。