正しい男の選び方
「……あなたって、すごくお金持ってるのね」
「使い方が間違ってるって言いたそうだな」
「その通りよ。私はこんなことしてもらったって、ちっとも……嬉しくない」
「何で?」
「んー」
葉子はしばらく考えた。自分の思ってる事を浩平にうまく伝えられるだろうか。
「こんなにお金を使わなくたって、私が幸せだと感じられる事はいろいろあるもの。
それに、私がこういう贅沢をすることで、貧しい生活しかできない人がいるとするならば、それは、やっぱり間違った贅沢だと思う」
「君は、聡明で優しい人なんだね」
てっきり反論されるかと思っていたら、「聡明で優しい」なんて言われて葉子は面食らった。
「あ!」
葉子は急に素っ頓狂な声をだした。
「何?」
「政好に連絡するの忘れた……」
「ほっとけよ、サンゴ礁のことなんか」
「……そういうわけにはいかないわよ」
「大好きなカレシだもんなー」
「そうよ」
自分を納得させるように声高に返事をする。
「また秘密が増えちゃうな」
浩平の何気ない一言に、突然あの夜のことを思い出した。
浩平の唇の感触が蘇ってくる。マシュマロのように柔らかくてすこしだけ湿り気を帯びた唇。
我を忘れてしまいそうになる。急に頬が火照って、背筋がぞくっとした。