正しい男の選び方
羽田についてから二時間後。
浩平と葉子は札幌空港の外に停めてあるフェラーリの中にいた。
「これって……あなたの車よね?」
「そうだよ」
「どうしてここにあるの?」
「ドライブするためにここまで持って来てもらったに決まってるじゃない」
「は?」
「運転手に頼んでここまでドライブしてもらったの」
「東京から?」
「うん」
「……もったいない!」
「すごいムダ」
浩平と葉子が同時に言った。浩平がアハハと笑った。
「はずれたか。ハモんなかったなー」
「私、もっとボキャブラリーを増やすし!!」
浩平は札幌から苫小牧を通って、えりも岬への海岸沿いの道を走った。
「えりも岬まで行くの?」
「うーん。行ってもいいけど、一泊しないとちょっとムリだよ。どうする?」
「……結構です」
車の屋根を下ろして窓を開けると眼前に水平線がどこまでも伸びていた。
反対側は大きく開けた牧草地に牛が点在している。見上げれば雲一つない気持ちのよい青空が広がっている。
道路はガラガラで車はすいすいと進んだ。爽やかな風が葉子の肌を通り抜ける。
葉子は目をつぶって、風を感じた。
目の前に開けた道を車は突き進んでいた。道はどこまでも永遠に続いているような、果てしがないような気がして爽快だった。
そのうちに体が飛び出してどこか別世界に入ってしまうかのような、そんな錯覚を覚える。
「楽しいでしょ、ドライブ」
ふいに浩平が声をかけた。