正しい男の選び方
忙しい休日
チリン
ケータイのメッセージの音にドキリとする。政好からだ。
お姉さん大丈夫だった?
全然たいしたことなかった
一安心だね
心配かけてごめんね
こんなやりとりが交わされる。
困った葉子は、姉に怪我をしてもらった。言い訳としては典型的すぎる気もしたが、他にうまいことが思いつかない。
嘘をついてしまった……
後ろめたさが倍増する。葉子は頭をブルブルと振った。
次の日から、葉子は仕事に行っても何しても気分が落ち着かなかった。
家に送って来てもらってから、浩平からはぱったりと連絡がなかったし、政好の方はボロが出るんじゃないかと思っていつもびくびくしながら話をしていた。
一体自分は何をどうしたいんだろう? 自分でもよく分からなかった。
ただ……浩平のやることなすことに一々心が乱されることは確かだった。
あのドライブ。
なんでわざわざあんなことをしたんだろう、と思う。
金持ちの道楽?
葉子は、ああいうのを一番嫌っていたから、不覚にも楽しんでしまった自分に自己嫌悪を感じていた。
それに、多分、彼女がいるらしいのに、ああいうことを平気でしてしまう浩平に不快感も感じていた。そして、その不快感は自分も政好を裏切っているという罪悪感にそのままつながっている。