正しい男の選び方
だから……というわけでもないのだが、葉子はなるべく政好のことだけ考えるようにしていた。
明日の休みは今度こそ一緒にハイキングに行こうと約束をして、その前の日の今日、二人はお鍋を囲んで乾杯をしている。
葉子が政好を招待した。
お鍋を食べ終わった後、葉子が後片付けをしながら少しまったりしていた時。
「……今日、泊まったら駄目かな?」
政好が遠慮がちに言い出した。
キタ……
正直この展開は想定内ではあるのだが、それでも軽い衝撃。
「うん、そうだね。泊まっていきなよ」
なるべく軽い調子で返事をしたかったのに、二回も舌を噛んでしまった。
その後は何だか気まずい沈黙。
「じゃあさ、映画でも見る?」
「うーん、葉子はどんなのが好きなの?」
「あー、うん、やっぱラブコメかな」
何気なしに言いながら、ちょっとしまった、と葉子は思った。
何となくその、あんまりアレな感じになると余計に緊張しそうだ。
「あ、でも、ズートピア、見てないから見たいかも」
慌てて付け足す。
「……じゃ、それでいいんじゃない」
どうも、政好はあまり映画が好きじゃないらしい。反応が薄かった。
映画が始まっても全然頭に入ってこない。
キンチョーするなぁ……
葉子は胸をドキドキさせていた。