正しい男の選び方


ついつい隣りの政好ばかり気にしてしまう。

葉子は少し見上げる感じになる政好の横顔が好きだった。
しゅっとしたあごのラインや、眼鏡の細いフレームのつるが通ってるカンジもセクシーだなぁと思う。

政好が葉子の視線に気づいて横を向く。

うわ……キタ……

「……」
「……」

政好の顔がゆっくり葉子の顔に近づいて来た。少しあごを上に向けると、チュッと唇が触れた。

その瞬間、浩平の唇のあの感触を思い出してしまった。
しっとりとした唇。最初は葉子の唇にそっと触れて、それから、体中をなめるようにキスしていった。
浩平の絡みつくような舌の感触を思い出すと首筋に電流が走るような気がする。

浩平がぶわーっと迫ってくる。

ちょっと、こんな時に、何、思い出してんのよっ!! 自分、しっかりしろ!
葉子はパニクって、
浩平を頭から追い出そうとするのだが、ますます鮮明にあの夜のことが蘇ってくる。

目の前の人に集中しなくちゃ駄目じゃない!
葉子は必死で自分に言い聞かせていた。


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