正しい男の選び方

その日はハイキング日和だった。
葉子はおにぎりとお茶を用意していそいそと準備をする。政好はその様子を見てベッドのなかでずっとにまにましていた。

「ほら、用意したからそろそろ起きて行こう?」

「うーん」

葉子が促しても政好の腰は重たい。

「全部、私にさせといて、自分ばっかりグデグデしないでよー」

大げさにすねてみせた。

「えー、でも、こういうことって女の子にやってもらったら男って嬉しいじゃん!」

政好は無邪気な顔で笑っている。

「……政好ってさ、ゴハンを作って誰かにご馳走したりすることある?」

「そういうのって男がやったらヘンじゃない?」

「……そうだね、ヘンだよね」

「オレ、料理は全然だし。言わなかったっけ?」

「あ、うん、そういえば聞いた」

政好は、料理をする云々以前に食べる事にあまり興味がないのかもしれない、と葉子は思った。
いつかだって、マイ弁当箱をほか弁屋に持って行くと言ってたではないか。

ようやく政好は重たい腰をあげ、出かける準備をした。

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