正しい男の選び方
ちょっと出遅れたせいか、その山は結構混んでいた。
「あー……思ったよりも混んでる……ごめん」
がっかり落胆して申し訳なさそうにしている政好がかわいい。
「そんなの、政好のせいじゃないし、しょうがないじゃない? まあ、気にせず歩こう」
それでも二人で歩いていると気持ちが良かった。
「よく来るの?」
葉子が聞く。
「んー、たまーに」
「誰と?」
「一人が多いかなー。友だちと来る事もあるけどね」
「友だち?」
「歩き仲間。……っていうか登山仲間? 昔の」
政好が山に登るとは知らなかった。凄いねーと感心すると、今は全然だよ、と笑った。
「……何やってんの?」
政好が歩きながらあっちでゴミを拾い、こっちでゴミを拾いしている。
「ゴミ拾ってるんだけど」
「いや、それはわかるよ。でもなんで?」
「なんでって……特にこういうビニールとかは自然に返らないし、野生動物にとっては危険だしね。海に流されたら最悪だし」
「……偉い! 私、今政好のことめっちゃ尊敬した!!」
「……なんか褒められてる気がしないな。むしろバカにしてる?」
すこしだけ不機嫌な声に聞こえる。
「そんなことないでしょ」
「……それにその言い方、なんかアイツにそっくりだ」
「アイツ?」
「だから、……星野。アイツ、バカにすんだろなー。こういうの。ゴミが投げられてくスピードの方が絶対早いでしょ、とか言いそう」
確かに、それはいかにも浩平がいいそうなことだった。
「また、一理あるだけにムカつくんだよな」
それから、政好は目の前にあるゴミを一つ拾った。