正しい男の選び方
見晴らしのよい小高い山の上が目的地だったが、葉子たちが上に着いた時には、すでにたくさんの人でごった返していた。
売店も人がいっぱいで、自販機の飲み物もほとんどが売り切れている。人をかき分けないと前に進めないほどである。
お弁当を食べる場所を確保するのは無理そうだった。
さすがに政好もここまで混んでるとは思わなかったらしい。呆然としていた。
「……弁当は降りてから食べよう」
「だねぇ」
10分ほど待って頂上での写真を撮って下に降りた。
途中の降りる道も行き交う人が多くて、ところどころは行列を作るほどだ。
「……何でこんなに混んでんだ……」
政好がぶつぶつ言う。
「もう少し早めに来れば良かったかもね」
「何、それ。朝ゆっくりしてたオレが悪いって言いたいの?」
「……そんなことは言ってないじゃない」
「遠回しに言ってるだろ」
イライラしている時の政好の言い方は毒があることが多い。
理知的で整った顔立ちの政好が、怒りを露わにすると人を寄せ付けないような冷酷な表情になる。
たたらぬ神に障りなし、とばかりに、葉子はなんとか政好をなだめてすかして下まで降りた。
それからも、政好の機嫌は直らず、葉子が家に帰り着くころにはヘトヘトだった。