正しい男の選び方
葉子がマンションまで戻ってくると、浩平がドアを背もたれにして床にぺたんと座っていた。
「……どうしたの?」
「カナが怒ってるんだ」
「それを言いにわざわざ? ずっとここで待ってたの、電話もせず?」
「……どうしたらいい?」
浩平はしょんぼりと肩を落として質問に答えない。
「……上がってく?」
思わずそう言っていた。
昨日、政好が泊まって行って、今朝も慌てて出て行ったので家の中は惨憺たる状況だ。
こんなことなら出て来る前にもうちょっと片付けとけば良かったと葉子は心の中で舌打ちした。
テーブルの上には朝食べたままのマグと皿がそのまま残っている。
急いでシンクに下げながら、テーブルを拭いて、浩平に座るように促した。
「お茶いれるね? コーヒーの方がいい?」
「……あっちにしよう」
浩平は棚にあるワインを指差す。葉子はグラスを二つ取り出してワインを注いだ。
「サンゴ礁、来てたんだ?」
ワインを飲みながら、浩平が不意打ちをかける。
「え?」
「朝飯の残り。マグカップ二つ。泊まったんだ、夕べ」
「……」
「どうだった、サンゴ礁とは?」
葉子は浩平の言葉を無視して続けた。