正しい男の選び方

11時過ぎ、最後の客が帰って、浩平の家に残ったのは、浩平と葉子、それに店長。そしてひたすら後片付けを進めているケータリング会社の人だけになった。

店長はワールドフーズの最後の後片付けをして、手には今晩の請求書を持ってやってきた。

本部にも問い合わせたが、これだけ大掛かりなケータリングサービスのようなことをするのは初めてらしく、どうすればいいのか戸惑っている。
もともと葉子の会社は、店舗による売れ筋や売れ方が全く違うので、各店舗による裁量が大きい。
割りと「儲ければ何やってもいいよ」という感じなので、葉子はいくらでも出すはずだからふっかけてやれ、と助言しておいた。

案の定、その日の売り上げが1割以上も増えた。

葉子の予想通り、浩平は文句を言う事も、ごねる事もなく言われたままの金額をすんなり払った。(こういう鷹揚さはさすが、金持ちである)

「乾杯しましょう」

浩平がグラスを持って来て、店長と葉子にシャンパンを注ぐ。
店長は、初めて入る「セレブ」のペントハウスにどぎまぎしているようだった。

「……すごいウチですねー。こんなの、映画でしかみたことありませんよ」

「夜景が素晴らしいので、どうしても住みたくなっちゃったんです。
 こうして見ると、東京もまんざらじゃないですよね。ほら、あそこにスカイツリーが見えますよ」

浩平はスカイツリーを指す。

「あっちが……新宿です。わかります?」

今度は左手に見える高層ビルが立ち並んでいる辺りを指差した。

「ホントだ。明るいなぁ」

店長がしきりに感心している。

「人間の営みもこうしてみるとなかなかのものですよね、こんなに大きな街を作り上げるんだから」

浩平はそう言うと、シャンペンを一気に飲み干した。





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