正しい男の選び方
浩平が見えなくなったのを確認して店長が葉子の肘をつついた。
「次があるかもしれないから、ご機嫌を損ねないようしっかり営業してこいよー」
「ええっ、そういうことですか」
「あったりまえだろー。昨日のねぇ、売り上げは凄かったぞー。あれ、またやれねぇかなぁ」
すっかりほくほく顔の店長である。
その日の仕事を早々と終わらせて、葉子は浩平のところに向かった。
ご飯食べるだけだし…… 捨てることになっちゃったら、もったいないもの……
エレベータに乗りながら葉子は自分に言い聞かせる。
昨日、浩平から借りたエレベータのキーカードもまだ返していない。
エレベータを降りたら、そこは家の中。
「おじゃまします」
と声を出したら、浩平が慌てたようにやってきた。
「ごめん。今日、ちょっとダメになった」
「え、どうしたの?」
「うん……」
言いにくそうに浩平は言葉を飲み込んだが、後ろから
「誰が来たのー?」
と無邪気な声が聞こえて来た。
カナが立っている。