正しい男の選び方
「おじゃましまーす」
明るい声だった。テーブルの上に並んだご馳走をみて、政好は目を丸くする。
「何? 今日は何かの記念日? ケーキかなんか買って来た方がよかった?」
「ん? いいのよ、そんなの。それより乾杯しましょう?」
政好の持って来たワインで二人は乾杯をした。
「このラザニア美味しいねぇ」
「でしょう。発売されたばかりの新製品なんだけどね、結構評判いいんだー」
「お惣菜もいろいろあるね。これ、全部作ったの?」
政好は、身の回りのことにはどちらかというと無頓着で、食べるものにもそんなにこだわりをみせない。
なのに、何で今日に限って妙に鋭いツッコミをするんだ?
葉子は昨日のパーティーのことを話すべきなのかどうか迷った。……というか、アレは仕事だったんだし、別に隠すようなことでもない、はずだ。
しかし、話をすれば誤解を受けそうな気がしたし、かと言って言い訳みたいになるのも嫌だったし、サラリと話せる気がしなかったので、結局葉子は言い出せなかった。
「あー、うん、実を言うとね、スーパーでの残り物。持って帰っていい、って言われたから」
「そうなんだ……」
政好は黙った。
(何だよ、この沈黙は。言いたい事があるならはっきり言ってくれよー?)
いろいろと後ろめたいところのある葉子としては、政好のこういう態度が一番応えた。