正しい男の選び方
「そういえばさー、お姉さん良くなった?」
「え? どうしたの、急に。お姉ちゃんなんてピンピンしてるよー」
「だって……この前怪我したって言ったじゃない?」
「えー、そんなこと言ったっけ?」
「それでハイキングに行けなくなったって……葉子パニクってたじゃん」
「!!!」
(しまった! あの嘘のことか!! 不意打ちされたからコロッと忘れてた!!!
ヤバい!)
政好は、葉子の顔をじーっと見た。疑るようにねっとりとした視線を送ってくる。
「……嘘?」
「ん? いや、あの……」
政好のやぶにらみは葉子の背筋を凍らせた。まるで、ヘビににらまれたカエルそのままである。
葉子ははーっとため息をついた。
「ハイ。ウソです」
「……何でウソついたの? ってか、何、してたの?」
(ううぅ。どうしよう……何か、もっともらしい言い訳……何かない?)
アレがバレて別れる事になりそうだった浩平とカナのことを聞いたばかりなだけに、絶対本当のことは言いたくない。
しかし、頭の中はすっかり混乱して何も出てこなかった。
しばし葉子は下を向いたまま無言だった。