正しい男の選び方
「その……ドライブに行ってたの」

「……ドライブ? 誰と?」

葉子は車を持っていない。一人で、とは言えなかった。

「……お姉ちゃんと」

「じゃ、何でそう言わなかったの?」

「だって……デートをすっぽかしてお姉ちゃんといた、って言いづらくて……」

「でも、それだったらもっと早く連絡できたんじゃない? どうして何も連絡してくれなかったの?」

ううぅ。鋭い。
そうなんですよー、予想外の展開で、電話のことなんか頭からぬけちゃったんです……とはもちろん言えない。

「あー、うん、何か、連絡してないのに気づかなくて」

「で、仮病を使ったのはどうして?」

非難めいた口調ではなかったし、穏やかな顔つきではあったけれども、政好は追求の手を緩めなかった。
葉子は冷や汗をかきながら、ふうふうと答える。

「えーと、うん、ただのドライブなのに連絡忘れたって正直に言えなくて……」

「ただのドライブ? オレとのデートキャンセルして?」

(ああ……墓穴を掘ってる気がする……)

「いや、お姉ちゃんが深刻そうだったから、追い返すことができなくてさ……。
 実際、深刻な話だったから連絡するの、忘れちゃったんだよ」

「何、深刻な話って」

(まじ!? それも言わせるの!?)

「そ、それはまだ、ちょっと言えないんだけどさ……」

「何で? オレに出来る事なら力になるし、言ってよ」

「……」

葉子はもう、泣き出したかった。

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