正しい男の選び方
葉子は立ち上がって政好に抱きつきながら首に腕を回した。
「……ありがとう、そんなに心配してくれて。こんなことなら最初から正直に言えばよかった。ゴメン。嘘ついて」
「……」
政好が黙った。
よし! このチャンスを逃してはならない!!
葉子は取り繕うのに必死だった。
修羅場になる前に何とか乗り切りたい、そんなことしか頭になかった。
葉子はそれ以上政好が何かいうスキを与えずに彼の唇を奪った。
たっぷりと時間をかけて政好の唇を吸い寄せる。(舌は入れなかった)いっとき政好の唇をなめ回し、それからようやく離した。
「……私のことをそんなに考えてくれたなんてすごく嬉しい……。ね、あっちに行かない?」
切ない笑顔を見せて、葉子はさりげなく政好をベッドに誘導した。
ベッドの上で今度は政好が唇を重ねてきた。激しく熱いキス。
葉子は不思議な気分で政好を受け入れていた。
体のどこか奥の方が妙に冴えている。
ここで政好に抱かれることの意味を冷静に計算している自分がいた。
必死で政好をつなぎ止めようとして彼の体を求めている。
けれども、葉子にはそれら全ての行為が政好への裏切りのように感じられてならなかった。
まるで我を忘れて政好の体にのめり込んでしまえば、そういう後味の悪さが消えてしまうと信じているかのように、葉子はその夜必死だった。