正しい男の選び方
結局政好はそのまま葉子のところに泊まった。
朝起きて一番に葉子の目に飛び込んで来たのは政好のドアップの顔だった。
「うわっ」
距離の近さにちょっとびっくりする。
それにしても端正な顔。眼鏡を外して目をつぶっているその顔は起きているときとはだいぶん違って見えた。
とつぜん政好の目がぱちりと開く。
「おはよう」
葉子がゆっくりと微笑むと、政好はこほっとむせた。
「お、おはよう」
政好の顔がみるみる赤くなる。
「な、なんか、ちょっと……」
政好は、それから口をもごもごさせたあと、顔を耳元に近づけて来て、聞き取れないほど小さな声で囁いた。
「夕べ、すごくなかった?」
政好は自分の言った言葉に自分で照れて真っ赤になっている。
目の前の政好が何だか可愛いかった。
それから、その朝の政好は、葉子がちょっと驚くぐらい陽気で、なんとか夕べの限りなく修羅場に近い状況を乗り切れたことに葉子はホッとしたのだった。
もう、二度と、絶対、あんなことはするまい。
葉子は心に誓うのであった。