正しい男の選び方
フーッ。
エレベータの中で葉子はいつになく緊張していた。
あんなに乱れた浩平を見るのは初めてだった。
何をいっても涼しい顔をして葉子をおちょくるばかりで……腹が立つのだが、でも、なんだかんだいって浩平は、女の扱いがうまくて、あからさまにえげつないことを言ったりしたりすることはなかった。
それがさっき見かけた時は、いつもの女たらしにドスケベオヤジ要素が加算されて、スマート要素がだいぶ減算されて、かなり残念な人になっていた。
「入るよー」
エレベータを開けて、浩平のウチへ入っていく。
結局、まだカードを返していない。
浩平は、カウチに一人で座ってお酒を飲んでいた。葉子はそっと横に座る。
「ミカちゃんは?」
「知らない」
「は?」
「あの後、そのまま一人で帰ってきたから」
キツネにつままれたような顔をして突っ立ているミカの顔が思い浮かぶ。
葉子は何とも言えない気分になった。
「ほっとくとかそういうのはだめじゃん! ホント、浩平、おかしいよ。そういうの、絶対しない人だったじゃん」
「ハハハー、オレがクソのような男だっての、知らないだろー。オレはね、女とみると、やり捨てるひどいヤツなんだぜ」
「ちょ、ちょっと、いきなりなにキャラ変えしてんの? アンタはちょっと軽薄で贅沢好きの女にだらしないヤツってだけだよ」
「……黙って聞いてりゃ言いたい放題だな、ベジタリアンのエコオタクのくせして」
「だから、……何があったの?」
「カナにふられた……」