正しい男の選び方
軽く唇が触れただけなのに、葉子は静電気が起きたかのような、ぱちんと一瞬のショックを感じた。
ほんの一瞬のショック。
「……私の言う事全然聞いてない」
葉子は、力の抜けた声を絞り出すようにそれだけ言うのがやっとだった。
浩平は葉子の言葉を無視して今度はほっぺたに軽くキスをする。
「親愛のキス」
「は?」
当惑する葉子をまた浩平のクチビルが襲う。
こんどは鼻の頭に。
「ふざけたキス」
葉子は思わずクスリと笑ってしまった。
浩平は、してやったり、という得意げな顔をする。
それから浩平は葉子の唇にゆっくりと自分の唇をすこしだけ押しつけてきた。
「優しいキス」
「……」
今度は葉子の唇をゆっくり甘噛みするようにキスを続ける。
唇にかすかな舌の感触が残った。
「美味しいキス」
次は葉子の唇をさっと触れた。唇の上に一瞬の風が通りすぎたようだった。
「盗むキス」
浩平は止めない。