正しい男の選び方
「……強情だなあ。じゃ、トーフのミートローフを用意しとくよ」
「オッケー!……じゃなくて! 政好なんか連れて来れるわけないじゃん」
「どうして?」
「どうして……って……」
「オレと一回寝たから? それともこの前キスしたから?」
「しーッ! 声がでかい!」
浩平は案外あけすけで正直である。あっさりと言ってのける浩平に葉子の方がやきもきする。
「そんなの黙っとけばわからないでしょ」
しれっとした顔で言う。
一体どういうつもりなんだろう。
ただの遊びなら、人の恋路を邪魔しないで他を当たってもらいたい。
それでなくても、葉子からしたら政好には後ろめたいことがありすぎるのだ。しかも、全部浩平がらみ。
葉子は、二人が顔を合わせて平静でいられる自信など全くなかった。
「大体さー、アンタだって、前は避けてたじゃん、修羅場はゴメンだとか何とか言って、政好のこと。どういう心境の変化だよ」
「……別に来たくないならいいけど」
案外あっさりと引き下がる。
社交辞令でついでに誘っただけだったのか? 葉子が断ると踏んで言ってみただけとか?
……何だか、一々浩平に振り回されている気がする葉子である。
「他に誰が来るの?」
何となく気になって訊いてみる。
「友だちだよ。夫婦が二組とあと何人か。全部で10人ぐらいかな」
「なんか、おっしゃれーな感じだなあ、やっぱセレブはやることが違うやね。そういうのは、私のガラじゃないからやめとく」
「そう。じゃ、残念だけど。……気が変わったら教えて」
「……うん」
まあ、気が変わるなんてことはないんだけど、と思いながら葉子は適当に返事をした。