正しい男の選び方
会合の後は飲み会だった。いわゆる「親睦会」ってヤツだ。
葉子は最初行くつもりはなかった。
しかし、政好に物静かな落ち着いたスマイルで「長澤さんも参加されますよね?」なんて念を押されたら……
葉子としても、「もちろんです」と返事するしかないではないか。
「あれー、帰るって言ってたのに?」
恵が葉子を見て意外そうな声を出した。
恵は大抵参加するが、葉子は参加しないことの方が多い。
「うん。そのつもりだったけど、緑川さんに誘われちゃってさ」
どうしても顔がにやけてしまう。
「何、それー。緑川さん狙い?」
「そんなんじゃないけど」
口ではいいつつも、素っ気ない素振りをするのはムリだ。
何も期待していない、と言われたらそれはやっぱり嘘だろう。
落ち着いた仕草に、耳に心地の良い声。もう少し、政好に近づいてみたい気がすることは確かだ。
皆で店まで移動していると、自然に政好と並ぶ格好になった。
「どんなエコバッグがいいと思いますか?」
先に話しかけてきたのは政好の方だった。
「そうだなぁ。やっぱり薄手のキャンパスバッグにさりげなくロゴを入れたのがいいんじゃないですか?」
「ロゴの色は緑ですかねぇ、やっぱり」
「そうですね。 そうだ、じゃ、Tシャツは同じ緑色にして白で抜いたらどうですか?」
「それ、いいかもね」
「おしゃれなのが出来たら、店長にウチの店にも置けないか聞いてみますよー」
「店?」
「私、『ワールドフーズ』っていうスーパーに勤めてるんです」
そこから思いがけず話に花が咲いた。
政好は熱心に葉子の話に耳を傾けている。決して饒舌ではないけれども、返事も的確で誠実な態度に、葉子は小躍りしたいほど気分が盛り上がってきた。
今夜は楽しい夜になりそうだった。