正しい男の選び方
葉子たちが行ったのは、和食と日本酒が美味しいしっとりとした佇まいの店だった。
そのままの流れで、自然に政好と葉子は隣り合わせに座る。
あらかじめコース料理を予約していたらしく、席に着くとすぐに料理が運ばれてきた。
乾杯をしたビールのジョッキが空になるころには、すっかりくつろいだ和やかな雰囲気になっていた。
少し、お酒が回って来たのかほんのりと顔をピンクにそめた政好が葉子の皿を見た。
「あれ? 全然食べてないみたいだけど、どうしたの?」
葉子は、何と答えるべきか迷った。夕べの食事を思い出したからだ。
険悪になったらイヤだな、と考えると、正直にベジタリアンと告白するべきかどうか迷う。
せっかく良い雰囲気で楽しく飲んでいるのに、ぶち壊したくなかった。
しかし、しばらく迷った末に、葉子は、結局正直に言うことに決めた。
まだコース料理の途中だから、次に出てくる料理を食べなければ、余計に気まずくなると思ったからだった。
「……実は、私、ベジタリアンなんですよ」
「……ええ、どうしてもっと早く言ってくれなかったの? それじゃ、食べられる物ないんじゃない?」
政好はすぐに店の人を呼んだ。
何やら事情を説明してくれたらしい。
すかさず枝豆がどんと置かれた。
「……なんか、スミマセン」
余計な手間をかけさせたかな、と葉子が謝ると、
「いやいや、こっちこそ気がつかなくてごめんね」
政好は盛んに恐縮している。