正しい男の選び方

政好に返って気を遣わせてしまった。
最初からきちんと言えばよかった、と葉子は後悔した。

「あと……野菜の天ぷらと豆腐ぐらいなら食えるかなー?」

葉子に確認している。

「……ハイ。いえ、あの、気にしないで下さい」

「もしかしてそれで、飲み会も来ないことが多いの?」

「……まあ、そうです」

ここまで突っ込まれたなら、何もかも正直に打ち明けてしまおう、そんな気分で答える。

葉子はさっきの政好の態度に感動した。
こういう場合、他の皆も葉子に妙に遠慮して、腫れ物をさわるように接せられることが多い。
冷ややかな視線を浴びることも少なくない。

昨夜の浩平みたいに、言い争いになることも……なくはない。
(昨晩はこどものケンカみたいでちょっとみっともなかったけど)

だから、政好が当たり前のように対応してくれたことに大いに安心したのだった。

「飲み会の雰囲気をぶち壊しちゃう事があるから、ちょっと怖いんです」

「そっかー、でも何で? アレルギーか何か?」

「いえ……そういうわけでもないんですけど」

「あ、ごめん。言いづらいこと聞いちゃったかな」

政好の細やかな気遣いが嬉しかった。

「絶対引きません?」

「え、何が」

「だから、ベジタリアンの理由、聞いても」

「何、何?」

政好が目をキラリとひからせた。今度は明らかに面白そうな顔をする。
葉子はコホンと小さな咳払いを一つする。

「その、アマゾンの森林伐採の原因の一つが家畜用の大豆を作るための畑にすることだ、って知って」

「それでベジタリアン?」

「まあ、そんなところです」

「……」

「やっぱり引いちゃいました?」

政好はふふっと笑った。意外と可愛げのある子どもっぽい笑顔。
葉子は一瞬ぽーっとなってしまった。

「じゃ、僕も告白。実はね、ビニール袋とペットボトルは買わない、使わない」


< 35 / 267 >

この作品をシェア

pagetop