正しい男の選び方
初めてのデート
結局怒りのあまりすぐには寝付けず、葉子が眠りについたのは夜中の三時すぎだった。
次の日、眠たい目をこすりつつ、なんとか時間通りに起きて朝食も食べずに家を飛び出す。
朝、気になってすぐに電源を入れるも、肝心の政好からのメッセージは何もない。
アテが外れたような、自分がのぼせ上がってるのを指摘されるかのような、そんな気まずさが葉子を襲った。
乳製品のところの品出しをしていると浩平がやってくる。
浩平は、「おはよう」と爽やかな笑顔で挨拶をした。
「星野さん! 朝っぱらから何ですか?」
葉子の方は、と言えば、寝不足も相まって声がやけにとげとげしい。
「いや、ヨーグルトを買いに来たら、君がいるから」
浩平は機嫌のよい声を崩さなかった。
「……」
そうだった。
浩平は朝ごはんに、ギリシャ・ヨーグルトを食べる男だった。
この浪費家め。
葉子がむぅっとしていると、浩平は涼しい顔をして話を続ける。
「昨日の写真、すごく気に入ったよ。ほら、待ち受けにしちゃった」
見れば、確かに待ち受け画面に、アーバンビューが海に浸かっている画像が出てくる。
「趣味が悪いですねぇ……相変わらず」
「相変わらず?」
「ええ、昨夜は素敵な女性と一緒だったみたいで」
わざと「素敵な」というところにアクセントをつけてやった。