正しい男の選び方
朝っぱらから、浩平の思わぬ襲撃を受けてペースが乱れていた。
それに、政好から何の連絡もない。
何だか肩すかしをくらったみたいで、そわそわと落ち着かなかった。
一日中、ちょっとのヒマをみては、ケータイをチェックする。
昨晩の飲み会が大いに盛り上がったのは、葉子の気のせいだけではない、と信じたい。
舞い上がっていたのは自分だけだったんだろうか……
余計な事ばかり考えてちっとも仕事に集中できない。
レジに立った時も何回かうち間違えた。
とうとう何のメッセージもこないままその日は終わった。
いきなりメッセージなんて、遠慮してるだけよ、なんて自分に言い聞かせてみても気分は晴れない。
あれこれ考えていると、どうしても弱気になってしまい、葉子の方からメッセージを送るのも何となく気後れした。
ケータイのメッセージごときにすっかり振り回され、妙に消耗した一日だった。
なのに、どうしたわけか、こんな時に限って、店を出たとたんに浩平にバッタリ出くわす
こんな日に限って二回も会うなんて。
しかも朝の始まりと一日の終わり。なんか最悪の一日を象徴しているようではないか。
明らかに目を合わせたにも関わらず、葉子はぷいとそっぽを向いて駅に向かって歩き出した。
ビルの下に潜ればそこはもう駅だ。
早足で歩いていると、カツカツと浩平が小走りで追いかけてくる。
「ちょっと、そこのお嬢さん」
葉子は依然として浩平を無視して歩く。