正しい男の選び方

「何て言ったらいい? 『この前は楽しかったです』とか?」

「何でもいいから、とにかくアクション起こせ」

葉子はケータイを取り出す。メッセージを打とうとしてやっぱりドキドキして手が震えた。
浩平がそっと右手を重ねてくる。

「大丈夫。落ち着いて」
「……」

ふうっと深呼吸して葉子はメッセージを入れた。
   
    こんにちは。夕べは楽しかったです

ピッと押して、メッセージは送信された。

「はぁー」

葉子が気のぬけたように息を吐いた。

「緊張した……」

葉子がそう言うと、浩平が葉子の背中をさすってくれた。

「取りあえず飲もう。ほら、パスタも来たし」

勧められるままに、パスタを一口二口、口に入れた時、ケータイがチリンと鳴った。

「……来た!」

二人の視線がケータイのスクリーンに注がれる。
  
     こちらこそ楽しかったです

「これだけ!? ……どうしよう、どうしたらいい?」

「単刀直入に『日曜日あいてますか』って誘えよ」

「いきなり?」

「デートしたいんだろ? その気があるならはい、って返事が来るし、気がないなら断るだろ。はっきりしていいよ」

「だって……断られたらどうしよう?」

「君は可愛いし、相手はエコオタクだぜ。断るわけないだろ」

なおも黙っていると、

「勇気だせよ。大丈夫だから」


< 50 / 267 >

この作品をシェア

pagetop