正しい男の選び方
アーバンビューの入り口。
葉子は政好を探して首をきょろきょろさせている。
デート先である六角公園は会社のちょっと先だ。
水筒を持参して、お弁当を詰め込んで、結構……重たい。早起きして弁当作りに勤しんだ。
程なくして葉子は政好の姿を発見した。
グレーのパーカーにジーンズ。足元はちょっと風変わりなきなり色のバスケットシューズだった。
それにトレードマークの大きなバックパックを今日もしょっている。
一昔前の学生みたいに垢抜けない格好。
それでも、清潔そうに短く刈り上げられた髪の毛と眼鏡、ほっそりとした長身のおかげで、それほど違和感なく街に溶け込んでいる。
スタイルがいいと得をするのは男も女も同じだ。
「待たせちゃった?」
「いえ、私も今来たとこです」
「……良かった。出がけに忘れ物に気づいて。今日はいつもと違うから」
「いつもと違う?」
「あ、こんな風に女の人と出かけるなんてあまりないので……」
俯き加減で照れている。
葉子よりは二つ三つ年上に違いないのに、政好はどことなく初々しい風情があった。
いかにも研究一筋でここまで来たのかな、という感じである。
二人で並んで公園に向かって歩いていると、後方からプップーとはでにクラクションを鳴らす音が聞こえてきた。
振り返ってみるとフェラーリのオープンカーに乗った浩平だ。ブオンというエンジンの轟音が、否が応でも周りの人々の注目を集める。
「デート?」
浩平が運転席から声をかけてきた。