正しい男の選び方

それから数日たった水曜日の朝。

葉子はレジにたっていた。あくびがとまらない。
急に来れなくなったパートさんの代わりである。社員である葉子は、こういう時にいいように使われるのだった。

無意識に商品をスキャンしていく。レジに写し出される金額を言い、お金を受け取りおつりを渡す。
目をつぶっていてもできそうな退屈な仕事だった。

「眠そうだね」

ふいに声をかけられて、葉子ははっとお客の顔を見た。

どこかで見たことがあるなぁ、と目の前の男をぼんやり見ていて、急に思い出した。

スパイス棚で遭遇したスパイス男だ。
今もしっかり胸元をあけたシャツを来ている。今日はネイビーだった。

……どこまでも気障な格好である。

クレ何とかスパイスとか何とかソーセージを買って行った。ええと……確か、ジャンバラヤ!
そうだ、ジャンバラヤを作るとかなんとか言っていた。

「ジャンバラヤはどうでしたか?」

思い出して良かった、とホッとする。

愛想笑いを浮かべながら聞いた。
< 6 / 267 >

この作品をシェア

pagetop