正しい男の選び方
チリン。
目の前のケータイが鳴って、いきなりメッセージが現れたから葉子はびびった。
今晩一杯やらない?
え!? ドキンとしたが、それは浩平からである。それに気づいて、がっくりと深いため息をついた。
「そんなにがっかりしなくても」
急に声をかけられてぎょっとした。顔をあげると浩平がいた。
カゴには玉ねぎ、大根、にんじん。レタスに紫蘇の葉。豆腐に漬け物。
骨付きの鶏肉とベーコン、卵にパン。雑多なものが色々詰め込まれていた。
葉子は無言でスキャンを始める。
「ずっと恨めしそうにケータイ見つめてただろ。勤務中に何やってんだか」
無言で手を動かし続ける葉子に話しかける。
「ほっといてよ」
「何、この前のサンゴ礁? うまくいってないの?」
ぐさりと一突きで核心を突かれて、涙腺が緩んでじわりと涙が滲む。浩平がぎょっとした顔をした。
「こらこら。仕事中だぞ。しゃんとして」
「……わかってる。アンタが余計なことを言うから」
「仕事が終わったら、話を聞いてやるから。な? 今は業務に集中?」
「……うん」
こんな日に限って、夜8時すぎから混み出してきたし、こんな日だからか、ミスが多く葉子の作業がもたつく。
一段落して店を出たのは10時近くになってだった。