正しい男の選び方
どうしよう……
店を出てから、葉子は浩平に連絡するべきか否か考えあぐねた。くたくただし、寄り道せずに早く帰ってベッドに横になりたい。
ケータイを手にぼんやりしていたら。
チリン。
目の前でいきなり音をたてる。……浩平からのメッセージだった。
終わった? 連絡待ってるよ
葉子の心中を見透かしているかのようなタイミング。
その手に乗るもんか、帰ってしまえ、と思いつつ、なぜか断りきれなかった。
もしかすると、……この前みたいに、浩平に背中を押して
政好とのことを応援してもらいたかったのかもしれない。
「上に来るだろ?」
エレベータで下に降りてきた浩平はあたかも当然のように葉子を乗せた。
「……一杯飲んだらすぐに帰る」
わざわざ宣言するのは、浩平に、というよりも自分に言い聞かせるためだ。
浩平からの返事はなかった。
エレベータを降りるといい香りが漂ってきた。
「とうふのミートローフ作ってみた。食うだろ?」
いらない、と言う前に、葉子のお腹が「グー」と返事をした。
仕方ないから、こっくり頷くと浩平は手早く支度をする。
「まあ、取りあえずこれでも食って元気だせ」
目の前に並べられた暖かなお料理とワインに葉子は大いに慰められた。