正しい男の選び方
それから、浩平はグラスに残ったワインを飲み干すとさらに葉子に絡み始めた。
「この際だから言うけどね、カナ、あいつだって、君が余計なことを言うからあれっきりになっちゃったんだよ?」
「カナ?」
葉子は聞き返した。
一杯だけ、という決意はどこへやら、葉子は浩平の話を聞いているうちに、ついつい何回かグラスを空にしていた。
少しばかり酔いが回って来たようで、
急に言われても誰のことだかすぐに思い出せなかった。
「ステーキを食べるはずだったコ」
ああ……中性的なのに、ぞくっとするような色気があった女だ。
「ようやくウチに招待することが出来たのに、君のせいですべてパーだ」
「あんな綺麗な人は……アンタにはもったいない。どうせ遊びなんでしょう?」
「遊びなわけないだろ」
急に真面目な顔をするから葉子はどきりとする。
「サイコーだったもん、カナは」
続きはふにゃりとした呂律の回らない舌で拗ねたように葉子に文句を言った。
葉子はちょっと呆れた。
二枚目なんだか三枚目なんだか……浩平は案外まぬけな男のようだ。
葉子はふふふと笑う。
「バカねぇ。本命だったら、先にそう言ってくれたら良かったのに」
「今度からはそうしまーす。君に邪魔されてもつまんないから」
「私があなたの邪魔をするわけないじゃない。関係ないんだもの」
「それは有り難い。まあ、飲んで、飲んで」
なにが可笑しいのか、浩平はひゃははと高笑いをして、自分と葉子のグラスにさらにどぼどぼとワインを注いだ。