正しい男の選び方
二人ですでに一本空けている。これは、二本目のワインだ。
「かんぱーい」
浩平が機嫌のいい声をあげると、葉子もつられて陽気に「かんぱーい」と声を張り上げた。
二人ともだんだんと大胆になってきている。
「ねえ」
葉子がグラスを指でピンと弾いた。
「今まで何人の女がここに来たの?」
浩平は席を立つと、葉子の隣りに座って、そっと耳打ちをする。
「バッカじゃないの。二人しかいないのに、耳打ちなんかしたってしょうがないじゃない」
「オレのトップシークレットだからね、大声では言えないよ」
浩平は唇に手をあててシーッという動作をする。あまりのバカバカしさに葉子は笑い転げた。
「で、結局何人の女が来たわけ?」
目の縁をほんのり紅くして睨みつける葉子の仕草が妙に色っぽい。
「さあ。憶えてない。でも、2回食べに来たのは君が初めてだ」
浩平は機嫌良くすっとぼけた。
それから間髪入れずに葉子に聞き返す。
「じゃ、今度はこっちの番。君は? 男のウチに来たのはここで何人目?」
葉子は首をかしげてちょっと考えるような仕草をした。
それから、今度は葉子が耳打ちをしようとする。さっきのお返しというわけだろう。
その時。
浩平は、すかさずくるりと横を向いて葉子の唇に自分の唇をのせた。
浩平の唇が軽くかすった。