正しい男の選び方

カチャカチャという食器の音が聞こえてきて葉子は目を覚ました。

白いシーツに包まれている。
全面ガラス張りの窓からは、気持ちのいい光が差し込んで寝室を明るく照らしていた。
ベッドの上から外を覗きこむと、自動車はまるで動くミニカーだ。豆粒のような人々がせわしなく街を行き交っているのがわかる。

葉子は大きくて寝心地のよいベッドにぽんと身を投じて、ふとんのなかにもぐり込む。
昨夜の事は夢ではないだろうか……まるで、現実味が湧いて来ない。
ただ、体の中に残っている熱だけが、昨晩の秘め事のかすかな痕跡だった。

トントンとドアをノックする音が聞こえて、やってきたのは浩平だった。

「冷めないうちにどうぞ」

コーヒーとトーストの載ったトレイを手にしている。コーヒーの香ばしい香りが部屋中に漂った。
浩平はトレイをベッドの上に置くと、ベッドのふちに座ってコーヒーを手にした。

「コーヒー、飲むだろ?」
「……どこで買ったの、このコーヒー」

「どこって、下のギャラクシー・コーヒーだけど」
「……やっぱりね。私はいらない」

葉子はいきなりつっけんどんな声を出して突き返した。


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