正しい男の選び方
「緑川さん、このまま帰られるんですか」
「あー……うん、今日はちょっとゆっくりする時間がなくて」
「……じゃ、私も急いでいるので、駅まで一緒にどうですか?」
久しぶりの会話に緊張して、ひどく他人行儀の言葉使いになる。
「そうだね、じゃ、駅まで行きましょう」
そのまま二人は一足先に駅に向かった。
駅までの道のりはあっという間だ。このまま別れてしまえば、またしばらくそれきりになりそうだった。
「研究、お忙しいんですか?」
葉子が聞くが、本当に聞きたい事はこんなことじゃない。うまく言葉がでてこなくてもどかしかった。
「そうだなー……この前、サンゴ礁見てきたから、その時の研究データとかまとめて、論文にしたいと思っているので」
「ずっと出かけてたんですか?」
「うん。二週間海の上。今は論文に追われている」
「ハハ、それで連絡がなかったんですね。もう連絡こないのかな、って思ってました」
「え? 何で?」
政好がびっくりしたような顔をする。
「だって……普通は一週間も放っておかれたら、そう思いますよ? それが何の連絡もなしに二週間以上でしたから……」
「ああ……そうなんですね」
何か思い当たるふしでもあるのか、政好は一人で納得している。