正しい男の選び方
「そうですね……。ちょっとがっかりしてました。
……緑川さんて、呆れるぐらい……鈍感ですね! 私、ずっと連絡待ってました。
小笠原に行ってるなんて知らなかったから、六角公園にいった後、てっきり嫌われたと思っていました」
政好は、そんなこと初めて思い至ったというような驚愕の顔を見せる。
驚愕することに驚くわ、と葉子は思った。
「嫌うなんて、そんなこと、あるはず無いじゃないですか。僕は、……その、長澤さんて素敵な人だなって思ってました」
ああ、これは、鈍感な政好の精一杯の好意の表現なのだろうか? 告白と解釈していいのだろうか?
葉子は、すこしはにかんで必死に伝えようとしている政好が急に愛しく感じられた。
「私も、緑川さんって素敵な人だな、って思ってます」
政好はそれを聞いて嬉しそうな顔になった。
ここぞとばかりに思い切って葉子は政好を食事に誘ってみた。
「やっぱり、何か食べて行きません?」
「え、長澤さん早く家に帰りたいんじゃないんですか?」
(……ああ、この人はやっぱりどこまでもただの鈍感な男なのだ。そういうこと、聞くかな、フツー)
「違います。緑川さんと一緒に帰りたくて、そう言っただけです。用事なんて何にもありません」