正しい男の選び方


    責任ないヤツは呑気でいいよな……

しかし、政好からこんなメッセージが来てしまっては、葉子には、それ以上何て返せばいいのかわからない。
元気づける言葉など見つけられない気がする。

一日中動き回って、ぐったり疲れていたし、明日もあるので、もうそのままにして寝てしまおう、と思った。

……が、眠れない。
今日一日の政好の機嫌の悪さや、明日の天気のことなどを考え始めたら、布団の中でますます目が冴えてくる。
体も神経もヘトヘトに消耗しているのに、全然眠りにつくことが出来ず辛かった。

しばらく布団の中でもぞもぞして、それから……電話をかけた。

「はい」

夜の12時を回っていたのに、浩平はすぐに電話にでた。

「もしもし……」

「どうしたの、葉子。こんな時間に」

いきなり電話したのに「葉子」なんて何でもないようにさらりと言うところが浩平らしい。

「うん。電話して大丈夫?」

「大丈夫だよー。何、サンゴ礁とケンカでもした?」

何か鋭い。

「いや、ケンカじゃないんだけど」

「そう言えばさ、さっきMHK特集かなんかで、『温暖化する地球』とかやっててつい見ちゃったよ」

浩平は急に話題を変えた。

「どうせバカにしながら見てたんでしょ」

「っていうか、ずっと葉子のこと考えてた」

意味深な言い方にどきりとする。

「君はいっつも、牛肉を食べたら森林が、とか考えて毎日暮らしてるのかなー? って思ったらね、疲れそうだな、とかね。嫌にならない?」

浩平はさっくりと軽く言うが、テンションの下がってる葉子にしたら、ぐっさりと突き刺さる。


< 94 / 267 >

この作品をシェア

pagetop