正しい男の選び方
次の日、葉子は朝起きて、祈るような気持ちで窓を開けた。
空を見上げるまでもない。葉子の願いも虚しく昨日よりもさらに激しく雨が降っていた。
いっそ行くのをやめたいぐらいだったが、もちろんそんなことはできない。葉子はのろのろと支度を調えて会場に向かった。
テントに行くと、政好はもう準備を始めていた。
「……遅かったね」
ぶすっとそれだけ言うと、後は黙々作業を続けている。
みんな今日は言葉少なだ。いつもはムードメーカーの中田くんも、政好のぴりぴりした雰囲気に冗談一つ言えないようだった。
それでも、土曜日だったせいか、午後からぽつぽつと人がやってきて、その日が終わるころには、金曜日の売り上げを上回った。
「良かった。昨日より2割ぐらい増えたよ」
葉子がホッとしたように行っても、政好の顔は強ばったままだった。
「全然良くないよ。まだまだ目標に達してないじゃないか」
「……ごめん、余計なこと言って」
「……いや」
それから、浩平は葉子に背中を見せて、大きくため息をついた。
葉子がそのままそこに立ち尽くしていると、チラリと振り返って言う。
「ちょっと……一人にしてもらっていいかな?」
「あ、うん、じゃあまた明日ね」
「うん」
葉子は、政好を残して一人で家に帰った。家に着いてからも、ソワソワと落ち着かない。
気になってやっぱり眠れなかった。
……
…………
しばらくケータイを握りしめたまま葉子は身じろぎもせず座っていた。
それから、おもむろにキッチンに立ってホットミルクを入れる。
甘くて暖かいミルクが口の中に広がった。