正しい男の選び方
「んー、まあね。私の勤めてるスーパーのタワマンに住んでるの」
「わー、すごいじゃん。あの二人、いかにもセレブって感じだもんね。ねえ、二人にコーヒーぐらいサービスしたら?」
「え?」
「こんだけ買ってくれたんだからさぁー。コーヒーあげといでよ。私が袋詰めしちゃうからさ」
「そうだね。じゃ、私、出してくる」
「オッケー」
葉子は浩平とカナにコーヒーを出した。
「あの……サービスです。どうぞ」
「ありがとう。カナー、コーヒーもらったよ」
浩平のそばにカナがやってきて、二人は仲良くコーヒーを飲んでいる。
「美味しい」
「あ、ありがとうございます。これは、あの、ウチで勧めているフェアトレードのコーヒーなんです」
葉子は二人にコーヒー豆のパッケージを指し示した。
「あー……これが、例のフェアトレードのヤツかぇ」
葉子には、浩平の顔が一瞬ニヤリとしたように思われた。でも、それは、あの朝のことを急に頭に蘇らせた葉子の思い違いかもしれない。