たった一つの忘れ物(仮)
プロローグ
『もう俺ら無理やわ。別れよ』

これが彼、恭平からの最後のメールだった。

あの後、すぐに返事を送ったが、二度と返ってくる事は無かった…


「恭平…」

あれから一年、あたしは数え切れない程の恭平との思い出の写真を毎日、一枚ずつ燃やしていった…

恭平を忘れる為に…

しかし、残りの一枚になった時、どうしても燃やす事ができなかった。
この一枚を燃やしてしまえば、思い出どころか、恭平の存在自体消えてしまう…

だけど、いつまでも過去を引きずったって仕方がない。

「もう忘れよう…」

そう思った今、残りの一枚を手にし、思い出に浸る様にその一枚の写真を眺めた。

恭平との思い出はいっぱいあった…
一緒に海に行ったり、仲の良い夫婦の様に手を繋いで買い物したり、一緒にご飯を作ってそれを二人で食べたり…

いつもあたしの隣には恭平が居た…

ずっと永遠に一緒だって思ってた…

だからかな。
恭平が隣に居ないのがこんなにも寂しいのは…


でも…もうあの頃の事は忘れなければならない。

「バイバイ、恭平…」

そう言ってあたしは持っている写真に火を付けた。

どんどん小さくなっていく写真が、あたし達の過去を少しずつ消していく…

これが無くなればあたし達の過去も綺麗に無くなる…

あたしは目にいっぱい涙を溜め、灰となっていく写真をじっと見つめていた…

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