春の扉 ~この手を離すとき~
何かしら理由をつけられては、すぐにバスケ部への勧誘が始まってしまう。
これまでもバスケ部の文乃と純輔から何度も誘われていたし、それに智香は男子バスケ部のマネージャーで健太郎くんの幼なじみ。
帰宅部のわたしがこのメンバーの中にいて、誘われないわけがない。
昔から運動は大の苦手だし、球技なんてもっての他。
確かに“青春したい”って思うこともあるし
『女子バスケ部のマネージャーならやってみようかな』
って心が揺らいだこともあったけれど。
でも今は、ほんの少しでも健太郎くんとの“共通”を持ちたくないという気持ちが強くなってしまって……。
それに
『部活をしている暇があるのなら勉強しなさい』
って、あの人からねちねちと面倒くさい小言を言われるのは分かりきっているし。