春の扉 ~この手を離すとき~
誰からかなんて開けなくても分かる。
このままにしておく訳にもいかないのも分かっている。
でも、返事を返すか返さないかは読んでから決めてもいいと思うし、それにこんな朝早くに返事をするわけにもいかないし。
なんていう理由を自分に与えて、少しだけ気を楽にした。
わたしはもう一度大きく息をつくと、メッセージアプリを開いた。
―― なんで無視すんの? 話がしたいから電話出て
1画面で読めるメッセージを何度も読み返した。
好きで無視をしているんじゃないのに。
わたしが健太郎くんに悪いことをしているかのような言葉に悲しくなるし、腹立たしくもなってくる。
そして、スマホを開けるんじゃなかったと後悔が沸いてくる。
わたしは返事も書けずに電源を切った。
でもこれで健太郎くんへの答えは完全に決まった。
これ以上、お付き合いはできない。