春の扉 ~この手を離すとき~
学校や友達には毎回お墓参りと言って休んでいる。
けれど本当はこの桜の木に会いにくるため、そして手紙を受け取るために休んでいた。
もちろん毎回お墓参りはしているし、今もお線香を供えてきたところだけれど。
でもお墓を見ても、おばあちゃんと、会ったことのないお父さんがいるなんて正直思えなくて。
でも、ここに来るとおばあちゃん感じられる。
幼いときは、会いたくて寂しくてどうしようもなくて。
学校やマンションを抜け出してはここに来て泣いていた。
そんな頃からだった。
桜の木にできている小さな細長いウロに、差出人のない手紙が置かれはじめたのは。
いつもより日にちが早かったせいか、今日はまだ置かれてはいないけれど。