春の扉 ~この手を離すとき~
『みおね、これからおばあちゃんをむかえにいくの。だからおろしてー 』
って頼んだら妙子おばさんは泣き始めてしまって。
わたしはおばさんを元気づけたくて、車の中で童謡をたくさん歌ってあげてた。
バス停の近くを通りすぎたとき、たくさんの救急車やパトカーが赤いランプを点滅させていて、ただごとじゃないことがおきているのは分かったけれど。
その珍しい光景は、子供のわたしには興味や好奇心の対象でしかなかった。
わたしはそのまま大きな病院に連れて行かれて。
走る妙子おばさんに抱っこをされたまま、一つの病室の前に運ばれて、そこでやっと降ろされた。
そして入る前に
『おばあちゃんがこの中にいるからね』
って言われて、理解できずに背中を押されながら中に入った。
そこには白衣を着た先生と看護師さん。
そしてベットの上で仰向けになっている人がいた。