春の扉 ~この手を離すとき~

『おばあちゃん、びょうきになったの? いたいの? 』


心配と不安でいっぱいになってしまったわたしを、おばあちゃんは落ち着かせるように優しく撫でてくれた。


『美桜、ごめんね』


でもおばあちゃんが謝る意味が分からなくて。



『おばあちゃんね、美桜とさよならしないといけない』

『どうして? みおがだまっておそとにでようとしたから? でもまだでてないよ? 』


怒られるかもしれないというよりも、『さよなら』という言葉にとてつもない不安と恐怖を感じて、わたしは涙が止まらなくなってしまった。


おばあちゃんはゆっくりと頭を振りながらわたしの手をとってくれて。

その顔はつらそうなのに、微笑んでくれている。


『美桜はいい子ね。おばあちゃんね、……あなたが大好き』


そして力強く握りしめられた手の力に戸惑ってしまった。
いつもは優しく手をつないでくれるおばあちゃんなのに。


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